Kodak Ektar 52mm f1.5
 

Lens Data

Lens Unit

Lens Photo

製造メーカー:Kodak
設計者:Willy E. Schade (1889-1973)
製造番号:ER146
製造年:1945年
特許番号:US2397565
特許申請日:1944/07/11
レンズ構成:4群7枚 ゾナー分離型
重量:270g
最小絞り値:なし
絞り枚数:なし
最短距離:1m
マウント:ライカスクリューマウント(宮崎光学による)

Lens Impression

コダック・エクターといえば、さまざまな有名レンズが頭に浮かびます。
エクトラの50mmf1.9、カードンの47mmf2、バンタムスペシャルの45mmf2など枚挙に暇がありません。ただ、なぜかf1.9以上の大口径レンズの存在はあまり知られておりませんでした。
資料に登場するものとしてはX線関節撮影用のフルロ・エクターf1.5がありますが、このレンズはなぜかフルロの文字はなく、単なる「EKTAR」という表示です。ただし、このレンズには絞りもヘリコイドもなく、長さ・口径ともに「
中将姫光学」さんのブログに出てくるフルロ・エクターと同一のレンズだと推定されます。
レンズ内に若干の曇りがあるため、逆光ではフレアが見られますが、ピント部分の精度が高く、線も細く再現され、さらにボケ味も気持ちの良いものです。ぜひ作例を参照してください。

-----------------------------------------------------

従来エクターレンズの大口径のものとして、Fluro エクター 111mmf1.5というX線間接撮影用のレンズが頻繁に市場に登場して知られていた。フォクトレンダー社にもR-ノクトン10.5cmf1.5という集団検診車で使用されたX線間接撮影専用レンズがあるので、同様の目的で利用されたものだと考えられる。これらX線間接撮影用レンズは、いわゆる特別注文でさまざまな焦点距離、開放f値のものが作られている。1959年(昭和34年)村上勇による「X線活動写真の研究」の中に記載されているレンズの中では、さらに明るい、「Kodak 43mm f0.81」「Kodak Fluro Ektar 110mm f0.75」などのコダックレンズが挙げられている。

一方、一般カメラ用小型フォーマットの標準レンズとしては、エクトラカメラの標準レンズ、エクター5cmf1.9が開放f値が最も明るいレンズだと考えられてきた。エクトラは非常に特殊なマウントを持ったカメラで、デジタルを含む他のカメラ用にマウント加工をするには大きな手間と費用がかかり好事家を泣かせてきた。しかし、描写が優れているために、無理してライカマウントに改変した例を多数目にしてきたのも事実である。

そうした中、突如オークションに現れたのがこのエクター 52mmf1.5である。オークションには同時にFluro エクター 52mmf1.5という、外観がほとんど同じレンズも出品されていて、同時に落札した。手元に来た実物2本を比べてみても両レンズの根本的な差異は発見できず、おそらく同じ構成のレンズであろうと結論付けた。内部の比較が必要だと考えたが、専門家に確認すると、分解は困難であろうということで、あきらめることとした。
現在までのところ、このレンズの出自にかかわる明確なデータは見つかっていない。絞りが装備されていないことなどから、やはりX線間接撮影用と考えるのが妥当であろう。しかしなぜ1本はFluroなのに、もう1本は単なるエクターなのか?売主の談としては、このレンズは米国の原爆研究施設で使われていたとも伝えられているが、信憑性について確認する手段はない。

また、このf1.5のレンズには特許が確認できる。1944年7月11日にWilly E. Schade (ウィリー・シャーデ)が提出したもので、それによるとレンズ構成は前群がプリモプラン、後群がゾナー改変型という複雑な形状をしている。最後群の7枚目はLaK09相当の高屈折新種ガラスを使用し、収差コントロールを図っている。f1.9、f2のエクターレンズ群が変形ダブルガウス型を採用するなか、このf1.5レンズがなぜ非対称レンズで設計されたのかはっきりとした根拠は記載されていないが、間接撮影という使用目的からすると、多少の歪曲収差はあるが、開放から画面周辺まで一定以上のシャープさを作り出すゾナー型のほうが、輪帯部に像を変形させるコマ収差の発生が見られるダブルガウス型よりも使いやすかったものと推定される。

 Photos with Ektar 52mm
 
Comment
2018nakameguro
(中目黒)

中目黒のカフェでランチをしたあとに、ふらっと歩いたときの写真です。
室内や軒下の弱い光の下で、近接気味に撮影したらどうなるか試しました。
なかなか良い雰囲気に撮れますね。被写体に絡みつく弱いハロと、特徴あるボケ、そして周辺光量の下落が立体感を与えてくれています。

These photos were taken during a lunch in Cafe at Nakameguro and small walk after that.
I tried how this Ektar shows when photos taken in near distance under dim light as indoor or under the eaves.
I confirmed it expressed very nice atomosphere. The weak halo entangling around the subject, characteristic bokeh, and decline of light around peripheral area gives me nice three dimentionality.

2016
Kawagoe
(川越)
 

新年の川越に行ってきました。今年は暖かくてのんびりと歩けました。
何本かレンズを持参しましたが、久しぶりの希少エクターf1.5も。
内蔵絞りがありませんが、今回はかなり明るい日差しでしたので、日光の入っている写真は手製の前面絞りでf5.6相当にして撮影しています。
フレアには弱いレンズですが、ハイライト部分の滲みとボケの柔らかい流れ方がなんともいえないレンズです。

I visited Kawagoe old town in New Year season. I could walk leisurely.
I brought several lenses include this Ektar f1.5 rare lens.
This lens has no internal aperture diaphragm, so I used handmade leather aperture diaphragm at around f5.6 pictures under sunshine.
This lens is weak against flare, but I admire the taste of blur at highlight and tender flow of back bokeh.


2012
Yanaka
(谷中)

絞りがありませんので、すべて開放f1.5です。路上スナップでピントを得るのはかなり難しいのですが、合焦している部分のきめ細かさは見事だと思います。
ボケは円周状にやや流れますし、2線ボケ傾向もそれなりにありますが、決して嫌みのない居心地の良い味わいだと思います。

All pictures are in full apperture because no apperture blades. It was so difficult to get focus on the target, however the focused part shows very subtle and detailed description. Bokeh on the circumstance flows circularly and also shows 2 lines bokeh, however I judge they are not unpleasant but comfortable taste.

 
 
home