Lens Impression
シュナイダー社でXenonを開発した優れたレンズ設計者A.W.トロニエは、戦争の混乱のなかシュナイダーの関連会社で軍需光学企業のISCO社への移籍を余儀なくされ、自らの夢を果たしきれずにいましたが、終戦間近の1944年にフォクトレンダー社に新天地を求めて移籍しました。
そこでColor-Scopar, Color-Heliar, Ultronなどを設計した彼が、Xenon f1.5で果たせなかった理想の大口径レンズとして設計したのが「夜のレンズ=ノクトン」です。設計技術の進歩、コーティングの進化などを背景に、ダブルガウス型の第1群を貼り合わせとし、さらに第2群を分離して空気レンズを活用した設計となっています。空気レンズといえばズミクロン50mmが有名ですね。しかし、Noktonの出荷は1950年から始まっていますので、ズミクロンの1953年より先行しております。開発はほぼ同時進行と言ってよいでしょうが、歴史的には大きな差がついてしまいました。。
当時のレンズに求められた解像力を向上させるためにきつめの収差補正を行い、ボケは固い傾向がありますが、とてもしっかりとした描写をするレンズに仕上がっています。しかし営業的には先行したズミクロンがセンセーショナルなライカM3と組み合わされて大きな話題を独占してしまったため、その陰に隠れてしまう結果となりました。ノクトンに最初に用意されたボディであるプロミネントは非常に美しいカメラであるが、ファインダーの性能や使い勝手を含めてライカM3の敵ではなかったと思われます。
ノクトンが他社に供給されたのはライカ用が良く知られていますが、もう一つがこのレクタフレックス用のレンズです。
レクタフレックスは一眼レフカメラであり、プロミネントやライカとはフランジバックが大きく異なります。そのため、レンズ設計に改良が加えられ、上記構成図でわかるように第1群の前に薄いメニスカス凹レンズが追加されました。(patent:US2662447A)
一部の資料にはこの追加レンズが凸レンズで表示されているものもありますが、論理的には凹レンズが正しいと思います。

プロミネント・ライカ用
ノクトン構成図 |
オリジナル(コシナ以前)のノクトンには主に10以上のバリエーションが存在します。以下に簡単にまとめておきます。(Contax用の画像は写楽彩http://www.syarakuse.sakura.ne.jp/さんから頂きました)。

L@ライカ用黒リム(主に320万番台) |

LAライカ用白リム(主に320万番台) |

P@プロミネント用最初期縦2重リング(番号不明) |

PAプロミネント用1重リング白リム(ブルーコート)(主に320万番台) |

PBプロミネント用1重リング黒リム(主に330-360万番台) |
PCプロミネント用上部メッシュリング+基部黒(主に370-390万番台) |

PDプロミネント用上部メッシュリング+基部白(主に390-460万番台) |

R@レクタフレックス用(主に310万番台)
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C@コンタックス用白リム(327万番台) |

CAコンタックス用黒リム(番号不明) |

特@ライカ用BRAUNSCHWEIG刻印入りUltron ,Nokton(320万番台) |
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