素人レンズ教室-その13 50mm超大口径レンズ・日独対決 (1) |
麗子先生: 皆さん、おはよう。 今日はとても珍しいお友達が来ています。 ドイツにある姉妹校のWetalar学院から、タマラ先生、カール君、アリーナちゃんです。 ジロー : グーテン・ターク。 カール : すばらしい。ジローはドイツ語が話せるのですか? はるか : カール、全然駄目よ。でもこの子最近ドイツに被れているみたいだからいろいろと教えてあげてね。 ジロー : 僕はアリーナちゃんがいいなあ。 はるか : (耳をつまんで)なに馬鹿な妄想しているの! いいわ、もう勝手にしたら。 タマラ先生:まあまあ、みんなで仲良くやりましょう。 麗子先生: そうよ、今日は大事な「ドイツ対日本の大口径レンズ対決」の日なんだから、同じチームの中で喧嘩している 暇はないわよ。 ジロー : そうだった。はるか、ごめん。 はるか : じゃあ、今日は許してあげるわ。 麗子先生: ところで、みんな出場するレンズたちは持ってきたの? はるか : はーい。 ジロー : 日本チームは、「Zunow 50mm f1.1」「Nikkor 50mm f1.1」「Fujinon 50mmf1.2」「Canon 50mmf1.2」「MS-Optical 50mmf1.3」 の5本だよ。 カール : ドイツチームは、「Xenon 50mm f0.95」「Noctilux 50mm f1.0」「Noctilux 50mm f1.2」「Kino-Plasmat 50mm f1.5」の4本。 今はEUだからフランスやイギリスのレンズも考えたけど、まあ日本が相手なら、ドイツだけで十分ですね。 Kino-Plasmatは大口径じゃないですけど、日本相手なら戦前のレンズで十分と思って参戦させました。 ジロー : (うわっ、生意気な野郎!)まあ、勝負はやってみなけりゃわかりませんよ。 アリーナ: それにゲストとして、オランダから「De Oude Delft 50mm f0.75」も連れて来ました。 はるか : うわー、凄い顔ぶれねえ。どんな結果が出るかワクワクするわ。 タマラ先生:では、レンズを並べてみましょう。 |
麗子先生: じゃあ、早速始めましょう。 対決は3ラウンドで行います。 第一ラウンドは、皆さんの予想に反して、「遠景を絞って撮影した画像の比較」です。 勝敗は①中心の解像度とコントラスト、②周辺の解像度とコントラスト、③立体感、の3方面で 評価して決めます。 審査員は私とタマラ先生です。 タマラ先生: じゃあ、みんな定点撮影に行ってください。 みんな : レッツ・ゴー! |
(1時間後) みんな : ただいまー。 麗子先生: ちゃんと撮れた? ジロー : ばっちりだよ。全部f5.6にした。今日は天気がよいから見通しも利いたし、うまく 比較できると思うよ。 アリーナ: 先生、どうやって比べるの? タマラ先生:とりあえず、全部並べてみましょう。カールお願いね。 カール : OK。 |
麗子先生: どう?何かわかった? カール : これでは勝敗を決める3要素は判りませんね。 ジロー : これって、補正してないですよね。レンズによって色も結構違うんですね。 アリーナ: Zunowはかなり黄色が強いですね。ちょっと濁った感じなんでしょうか? それ以外のレンズは大きくは差はないみたいですけど、日本側ではMS-Optical、ドイツ側ではXenonが 「空の抜け」が良いように見えます。 ジロー : FujinonとNoctiのf1.0も悪くないね。 はるか : そうすると、一概には言えないけど、製造年代と関係がありそうだわ。 タマラ先生: そうですね。コーティングの技術の差や、経年変化などがありますから、画像全体の抜けは より年代が古いレンズには不利になりますね。 ジロー : すっきり撮りたいなら、新しいレンズを買えってことかあ。 麗子先生: じゃあ、拡大画像にいきましょう。 |
タマラ先生: どれが解像力、コントラストに優れているかしら? はるか : 比較的コントラストが低いのが、Zunow、Nikkor、Xenon、Kino-Plasmatね。 アリーナ: それ以外は大きな差ではないみたいだけど、私はNoctilux/f1.0とXenonが解像力、コントラストともに 高いように見えます。 ジロー : いやいや、Canonもかなりだよ。ノクチにも負けてない。 カール : いや、僕の判断ではやはりNoctilux/f1.0が抜けている。 (侃々諤々) 麗子先生: これでは決まりませんね。 では、さらに拡大しましょう。電線部分が良いでしょう。 |
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カール : 一目瞭然だね。 ジロー : (この野郎!) タマラ先生: では順位をつけますね。 ①Noctilux f1.0 ②Canon f1.2 ③Noctilux f1.2 ④Fujinon f1.2 ⑤Ms-Optical f1.3 ⑥Xenon f0.95 ⑦Nikkor f1.1 ⑧Kino-Plasmat f1.5 ⑨Zunow f1.1 と思いますが、麗子先生は異論ありますか? 麗子先生: いいえ、仰るとおりだと思います。 Noctilux f1.0はさすがに近代コンピューターの設計だけのことはありますね。一方で、Canon f1.2の成績は 素晴らしいと思います。 FujinonもCanonに僅かの差ですから、昭和30年代の日本のレンズ設計・製造技術の高さがわかります。 カール : Nikkorは残念だったね。世界のNIKONとしては、やや不本意じゃない、ジロー? ジロー : 当時の日本の大口径競争を知らないの?NIKONとしてはとにかくf1.1が欲しかったんだと思うよ。 Zunowなんかにいつまでも先を越されているわけにはいかないからね。 だから、無理したのさ。もしFUJIやCANONみたいにf1.2で止めておけば、もっと余裕で設計できたに違いないさ。 タマラ先生: 立体感についてはどう?みんなの意見を聞かせて。 アリーナ: 先ほどの中心部分の画像をじっと見ていると、線路が「上から下に」走っているように見えるレンズと、 「奥から手前に」見えるレンズが あります。 実はほとんどが「上から下に」見えるのですが、ZunowとKino-Plasmatは「奥から手前」に見えるように思います。 はるか : 私も同感。特にZunowが強いわ。 これってボケ方と関係あるのかしら。本当は全体の解像度が低いのかもしれないけど、奥のほうがボケていると、 立体感を感じるわ。 タマラ先生: そうね。人間の脳のイメージングの問題だから、ボケはかなり関与していると思うわ。。 麗子先生: では、立体感は、 ①Zunow ②Kino-Plasmat ③その他レンズ ということね。 タマラ先生: では、次は周辺拡大画像にいきましょう。 |
ジロー : うわあ、参ったなあ。 カール : 再拡大するまでもないね。Noctilux f1.0が他を圧倒しているな。 はるか : 本当ねえ。周辺部分の収差補正は近代レンズは格段に違うわ。 アリーナ: でも中心部と同じようにCanonとFujinonはかなり優れていると思います。 Ms-Optical f1.3は周辺は弱いみたいですね。 ジロー : このレンズはオーダーメイドなので、敢えて収差補正を少なくして、ややソフトでボケを美しくしてもらったんだ。 それに、f1.3にしてはかなり口径も押えて軽めに作ってあるから、周辺は厳しいかもしれないな。 タマラ先生: そうね。絶対評価ではNoctilux f1.0ですけど、年代を考えると日本の両レンズには敬意を評さなくてはいけないわ。 順位としては、 ①Noctilux f1.0 ②Canon f1.2 ③Noctilux f1.2 ④Fujinon f1.2 ⑤Ms-Optical f1.3 ⑥Nikkor f1.1 ⑦Zunow f1.1 ⑧Xenon f0.95 ⑨Kino-Plasmat f1.5 でよいでしょうか? 麗子先生: 結構です。立体感は画像の乱れの差がありすぎるので、比較は難しいですね。 ジロー : くそっ、レンズ選択に年代制限をつければよかった。 はるか : いまさら遅いわよ。 でも私は決して日本のレンズが負けたとは思ってないわよ。 麗子先生: はるかちゃんの言うとおり。 あなたたちの好きなレンズは「滲みレンズ」でしょう。 くっきり、はっきり写るレンズが実際の写真で必ずしも優れていると思っちゃだめよ。 はるか : それにまだ第一ラウンドよ。次は開放があるわよ。 ジロー頑張りましょ。(チュ!) ジロー : おおっ、元気百倍! カール、次はきっと雪辱するからな。 カール : そうこなくっちゃ。 (こっそり・・・・・「アリーナがジローってなかなか素敵と言っていたぞ」) ジロー : さあ、次も頑張りましょう、みなさん。 はるか : 軽薄なやつ。 (第二ラウンド 原色の花対決に続く) |