素人レンズ教室−その18 基本に返って、「焦点距離、像距離と像の倍率について」 |
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麗子先生 : みなさん、おはよう。
自習時間はとてもよい子にしていたみたいね。 カールとアリーナちゃんに会えなかったのは残念だけど、タマラ先生からも君たちによろしくという伝言をいただいたわ。 ジロー : 先生、ずいぶんご機嫌のようですけど、彼氏とよいことでもあったんですか? いてっ! はるか : 変なことを突然言い出すんじゃないの。先生すみません。 麗子先生 : いいわよ。でもそういうことは内緒よ、フフフ。 ジロー : 先生、大丈夫? いてっ! 麗子先生 : ところで、昨日、遠くの学校の生徒さんからこのレンズ教室宛てにお手紙をいただきました。 ジロー : おお、いよいよ僕にファンレターが、、、、! いてっ! 麗子先生 : いいえ、そうではなくて、どちらかと言うと勉強内容についてです。 はるかちゃん、読んでみて。 (読んだ後) はるか : 最近、このレンズ教室の内容が、ちょっと難しくなりすぎているとか、特定のレンズに偏っているので、 もう少し基本的なことをもう少し詳しく勉強したいって、書いてあるわ。 ジロー : 先生があんな難しい自習の課題なんか置いて行くからだよ。 麗子先生 : それもそうね。 じゃあ、今日は少し基本的な部分の勉強でおさらいしてみましょうね。 ジロー ; 了解。 麗子先生 : では、今日初めの勉強としては、「焦点距離と像の大きさと明るさ」についてもう一度整理してみましょう。 はるか : 数値の前提は35mmカメラを基準として合わせたほうがわかりやすいと思います。 麗子先生 : じゃあそうしましょう。はるかちゃん、まず基本となる公式をあげてくれる? はるか : わかりました。 (図1) @ 1/a+1/b=1/f (a=被写体から前主点までの距離、b=後主点から像面までの距離、f=焦点距離) A 倍率M=a/b B F値(絞り値)=焦点距離(f)/有効口径(D) (注)主点については、レンズ教室の初めのほうを見てね。 こんな感じかな?? |
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麗子先生 : はい、とりあえずこれでいいわ。 じゃあ、ジロー、「もし被写体が無限遠にあって、50mmf1.4レンズで撮影したときのレンズの状態と画像の大きさ」はどう? ジロー : ええっと、こうですか? (問1) aが∞だとすると、1/aはゼロ、そうすると、式は1/b=1/fとなるので、後主点からフィルムまでの距離 b と 焦点距離 f が等しくなる。 ということは、50mmレンズの主点(おそらくレンズ鏡胴の中央付近)からカメラのフィルム面までがちょうど 50mm(5cm) になるということだね。 倍率は、∞/50mmだから、、、、ゼロ? |
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麗子先生 : そうね。レンズがヘリコイドで繰り出されないで、最も手前に来ている状態ね。 画像の大きさは、無限の遠くにある被写体だから、計算上は限りなく小さくしか写らないということになるわ。 F値の変化はないわね。 じゃあ、はるかちゃん、「被写体が1m先の高さ20cmの棒」だったら? はるか : はい、わかりました。こうですか? (問2) 被写体が1m(1000mm)先で、50mmレンズを使用しているとすると、 1/1000+1/b=1/50 → 1/b=19/1000 → b=52.63mm ということになり、 レンズはヘリコイドで2.63mm繰り出される。 その時の像の倍率はM=52.63/1000で0.0526倍、すなわち高さ20cmの被写体がフィルム上では1.05cmに写る。 F値は1.47で、90%。 10%暗くなるのね。 |
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麗子先生 : はい、じゃあ、同じ被写体で100mmレンズで撮ったら? はるか : ええっと、 (問3) 被写体が1m(1000mm)先で、100mmレンズを使用しているとすると、 1/1000+1/b=1/100 → 1/b=9/1000 → b=111.11mm ということになり、レンズはヘリコイドで11.11mm繰り出された状態になる。 その時の像の倍率はM=111.11/1000で0.11倍、すなわち高さ20cmの被写体がフィルム上では2.2cmに写る。 フィルムの上下ぎりぎりね。 実効の明るさは2割も落ちているわ。 |
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麗子先生 : そうね。じゃあジロー、被写体が10cmの近くにあって、50mmf3.5のマクロレンズで撮影したらどうなる? ジロー : う〜ん、こうですか? (問4) 被写体が10cm(100mm)の近距離マクロで、50mmレンズを使用していると、 1/100+1/b=1/50 → 1/b=1/100 → b=100mm ということで、レンズはヘリコイドで5cm(50mm)繰り出さなくてはならない。マクロレンズが長ーく伸びるわけだ。 倍率はM=100/100で1倍(等倍)になる。 すなわち高さ20cmの被写体はフィルム上でも20cmとなり、 まったく画面に入りきらない。 F値は7で、倍になっている。明るさとしては25%しかないや。 |
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麗子先生 : そうね。じゃあジロー、被写体が10cmの近くにあって、50mmf3.5のマクロレンズで撮影したらどうなる? ジロー : う〜ん、こうですか? (問4) 被写体が10cm(100mm)の近距離マクロで、50mmレンズを使用していると、 1/100+1/b=1/50 → 1/b=1/100 → b=100mm ということで、レンズはヘリコイドで5cm(50mm)繰り出さなくてはならない。マクロレンズが長ーく伸びるわけだ。 倍率はM=100/100で1倍(等倍)になる。 すなわち高さ20cmの被写体はフィルム上でも20cmとなり、 まったく画面に入りきらない。 F値は7で、倍になっている。明るさとしては25%しかないや。 |
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麗子先生 : はい、だいたいイメージは掴めた? でも、これらは前主点と後主点の間の距離は無視していること、レンズは全群繰り出しを前提にしている ことなどから、フローティング機構を備えたレンズや、主点間の距離が焦点距離上無視できない広角系レンズでは 正確にはあてはまらないから、気をつけてね。 二人 : はーい。 麗子先生 : じゃあ次は明るさをもう一度整理してみましょう。 繰り返すと、 明るさをF値(絞り値)で示すと、F値=焦点距離(f)/有効口径(D)で表されるということね。 はるかちゃん、もう少し具体的にまとめてくれる? はるか : わかりました。 (a) 同じ有効口径で、焦点距離が2倍になると、F値も2倍になる。(明るさは1/4になる。) 同じ口径で50mmがF1.4だとすると、100mmではF2.8となる。 (b) 同じ焦点距離で、有効口径が2倍になると、F値は1/2になる。(明るさは4倍になる。) 有効口径が1.4倍になるとF値は1/1.4になり、明るさは2倍になる。 50mmレンズで有効口径が36mmくらいだと、ポピュラーな50mmF1.4レンズとなるが、 この口径を1.4倍し、約50mmにすると、50mmF1.0のノクチルックスになる。 ジロー : 確かに、ノクチの前玉って、5cm以上あるよ。 麗子先生 : わかりやすくまとめてくれたわね。 じゃあ、同じレンズで、ピント合わせのためにヘリコイドを繰り出していったらどうなるかな?ジロー? ジロー : さっき計算したような、、、、、、、。うーん、わかりません。 はるか : こうですか? (c) ヘリコイドでレンズを繰り出すと、レンズから投影像面までの距離が離れることになるので、距離の比の2乗分暗くなる。 50mmレンズで等倍撮影をする場合、ほぼ焦点距離と同じ長さを繰り出す(前出)することになるので、 投影像面までの距離が2倍になり、F値が2段階分(1/4の明るさ)暗くなる。 50mmF2.8のレンズで等倍撮影する際にTTL露出計を使わない場合は、F5.6相当になってしまっているので、レンズ表示より 2段階分露出を増やす必要がある。 麗子先生 : はるかちゃん、応用問題だったけど、よくわかったわね。同じレンズでもヘリコイドを回す度にだんだんと暗くなっているのね。 でも最新のカメラはすべてTTLで測光しているから、ほとんど気にすることはないですけど、手ぶれだけは注意しないとね。 ジロー : 先生、ところでオールドレンズを使っていると、同じ条件で撮影していても、「周辺が暗くなる」じゃないですか? これってなんで? 麗子先生 : そうね、良い質問ね。周辺光量の減衰は、いままで勉強してきたこととはちょっと違うわね。 これは、次回にしましょう。 じゃあ、今日はおしまいにします。 ジロー、はるか : はーい。、 |
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