Lens Impression
プリモプランの5cmf1.5です。プリモプランは通常多く見られるのはf1.9のタイプで、様々な焦点距離(Vade Mecumでは30,50,58,75,80,100,180mmf1.9が掲げられている。)の存在が知られています。マウントも多様ですが、特に珍しいものはやはりライカマウントで、市場に出てくる機会は少なく、出てきても他のマウントの数十倍という価格がつくこともあります。特に50mmf1.9のライカマウントは、Makro-Plasmat50mmf2.7、35mmf2.7と並ぶレンズ先端が膨れたキノコ型をしており、特に貴重なレンズとなっています。
さて、このf1.5のタイプは、型式全体としてかなり珍しく、ほとんど市場で見かけることは無いようです。
Vade Mecumでも25mmと50mmがCine Mackenstein Paris用に作られたと記述されているだけで、詳細は不明です。
Meyerの出荷台帳によると、Primoplan 5cmf1.5は、1939年から1940年にかけて100個以上がArriflex用に作られております。製造番号は917,000-8000番台、959,000番台、974,000番台、などになるようです。またその後990,000番台にライカ連動の個体が20個製造されており、今回のレンズはこの20個のうちの1つとなります。
この個体について正体不明な点は、マウントがCONTAXマウントであることです。出荷台帳にライカ連動を記載されている個体をわざわざCONTAX用に変更したのか?それとも初めからこの形態であったのか?非常に興味をそそられる部分ですね。
レンズ構成を反射光を移動させて確認してみると、絞りの前群は正方向4+逆方向2、後群が正方向1+逆方向1or2、となりました。他のf1.9のプリモプランではこのような反射にはなりません。このレンズは、一般的なエルスター変形のプリモプラン型ではなく、基本的エルノスター構成に近いものとなっていると推測できます。
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以前プリモプランの撮り比べを行った。対象となったのは、ライカマウントの5cmf1.9、エクサクタマウントの戦前型及び戦後型の58mmf1.9、そしてこの5cmf1.5の4本だ。
各レンズの部分拡大画像で後ろのボケを比較してみたが、ボケが最も素直なのは、この5cmf1.5をf1.9に絞った画像であり、この結果には正直かなり驚いた。しかし、このプリモプラン
5cmf1.5はレンズ構成がプリモプラン型ではなくエルノスター型なので、ボケの傾向が異なるのは当然かもしれない。
一方でピント部分のシャープさは他のレンズにやや劣り、さらに周辺画像を全体的に眺めてみると開放f1.5では放射状のボケの流れが見られており、しかもボケの輪郭も他レンズ並みに出現している。なんといってもf1.5からf1.9への改善が著しい個体である。しかし、やはりプリモプランらしさはその独特のレンズ構成に依るべきであり、構成の異なるf1.5のレンズについては、補完的位置づけに留め、f1.9レンズを本流と考えるべきであろう。
f1.5レンズの使用目的は明確ではないが、一部の資料にCine Mackensteinというムービーカメラに装着されたものとの記載がある。しかし、この指摘にはなかなか同意することはできない。Mackensteinといえば金属製の中判ステレオカメラが有名であるが、35mmサイズのムービーカメラについてはほとんど記録がない。同社は1915年に破産し、引き継いだ会社も生産はほぼ1930年代中に終了していることから、1941年製と考えられるこのレンズの使用目的としては適当とは考えられない。
このレンズの製造番号は99万番台だが、それに近い番号でレンズ形状が類似したレンズをインターネット上で探してみると、97万番台と100万番台に3cmf1.9、95万番台に5cmf1.5などが見つかり、いずれもレンズ前面の文字の配置や形状などにかなりの共通点が見られる。さらにそれらにはいずれもアリフレックス用のピント調整つまみが装着されていることから、今回のレンズも元はアリフレックス仕様だったものがコンタックスマウントに改装されたと考えるのが妥当のようだ。
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