Lens Impression
WollenskのRaptarも非常にバリエーションの多いレンズですね。焦点距離も広角から望遠まで様々、開放絞り値もf1.5、f2.0、f2.7、f4.5など、とても列挙できません。
さて、このレンズは、その中でもとても変わり種の51mmf1.5です。2インチの換算で51mmではありません。わざわざ2.04インチと刻印までされています。さらにシリアルナンバーも特殊で、N&Dからはじまり、また最後には(7)という意味不明の番号まで付けられています。
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ウォーレンサックは資料の少ない会社で、特にラプターが活躍した時期と、会社が買収されていった時期が重なっていることから、まとまった情報がなかなか入手できない状態である。このレンズでも少なくともレンズ構成と製造年代を特定したいのだが、こちらも明確な資料は見つかっていない。
今回紹介するレンズの売主は商談時にこのレンズはEG&G社製カメラに組み込まれて、米国ネバダ州の核実験場のオシロスコープの画面に現れる原爆が発する電磁波の微細な波形を記録するために使われていたことと、このレンズの前はニッコール5cmf1.4が使われていたことを伝えてきていた。同社は 以前はEdgerton, Germeshausen, and Grier, Inc.,という会社名であったが、 先頭に名前のあるHarold Eugene Edgertonは1億分の1秒を可能とした「Rapatonic camera」の考案者であり、またストロボ撮影のトップランナーであったことから、爆発現象の瞬間記録に携わるには最適の会社であったといえる。
EG&G社は1961年に爆発の瞬間を直接記録するためにFastax超高速カメラの特別仕様を開発したが、このカメラにはWollensak
Fototel 20 inch f6.3とWollensak Mirrotel 40 inch f6.3が装着されていた。EG&GとWollensakは高速撮影技術の研究などでかなり密接な関係があったようで、当時米国の原子力委員会の主要コンサルティング業者として核実験に携わっていたEG&G社が間接撮影用レンズにニッコールの後継としてWollensakのRaptarを採用した可能性は高いのではないかと考えられる。
宮崎光学に同レンズ(Dumont CROの記載があるので全く同一ではないが、レンズ構造は同じであるとMs-Opticalで特定)の改造を依頼した中将姫光学のH氏の記事によると、このレンズは4群6枚の変形ダブルガウス型であるようだ。では、LEDライトを使って反射面で確認すると、前群は反射が5つ、正の動きが3、逆の動きが2である。これは間違いなくダブルガウス型の前群と同一と考えられる。後群は反射が5つ、正が3つ、逆が2つ。こちらもダブルガウス型の後群と同一と推定できる。
4群6枚の変形ダブルガウス型でf1.5のレンズを設計した場合、開放での収差補正にかなり無理があり、シャープさを損なう可能性が高いが、このレンズは非常にシャープであり、しっかりとした構造と素材が投入されているのではないであろうか。
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