Lens Impression
かなり初期のトリオプランになります。
トリオプランというと「バブルボケ」というイメージが強くなっていますが、これは100mmf2.8という中望遠レンズに特徴的なボケの形状で、必ずしもトリオプランというレンズすべての傾向ではありません。
バブルボケとはトリプレットの3群3枚という限られたガラス枚数(収差補正曲面数)で球面収差を強力に補正するために、かなり強めに過剰補正したために発生するボケの形状で、トリオプランだけでなく過剰補正傾向のレンズでは多く発生する現象です。ポートレートなどを撮影した際にちょうど後ボケの大きさが焦点距離100mm前後のレンズだと円形のボケが目立つサイズに描写されるために、かなり注目されたようです。
絞り開放時にレンズ周辺部を通過する光が中央部分を通過する光よりも後方にずれるため、そのままではピント面の解像力が低下します。それを改善するために周辺の光を手前に引き戻すようガラス形状を工夫したことで、後ボケの光が偏ってしまい円形のリング状になります。後世のレンズではガラス枚数を増やすことによって、ピント面の解像力とボケのなだらかさを両立させて改善してきましたが、このころはまだコーティングが実用化されておらず、ガラス枚数の増加はそのまま内面反射の増加とフレアの増大に直結したため、レンズ設計者は非常に苦労しました。
f2.8、f2.9などいくつかの開放f値をもつトリオプランの中で、f3のものはHugo Meyer自身が「Portrait Trioplan」と称しているように、全体的に柔らかな描写を示すレンズです。しかし、決してソフトレンズなどではなく、ピント面ではかなりしっかりとした描写を示してくれるレンズです。

1926年のHugo Meyer社カタログ
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このレンズが発売されたころにはまだライカなどの小型フォーマットのカメラは作られておりませんので、上記の1926年のカタログを含め55mmという短い焦点距離のレンズは記載されておらず、7.5cmでも000番という特殊なナンバーが与えられています。この55mmf3レンズはさらに特殊な目的で製造されたものなのかもしれませんが、今のところ具体的な証左は見つかっておりません。、。
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